第29章 君と紡ぐ時間
顎を上げ、その先を強請るような智の、
涙の筋を唇でなぞり、
顎まで滑らせ、そこを軽く吸った。
「…ん…っ…」
思わず漏れる甘さを孕んだ吐息が、
俺の下半身に、少なからず影響を及ぼす。
「…泣き虫…」
「…虫じゃないもん…」
「じゃ、泣きおじさん…」
「もおぉ!翔ちゃん!!」
「んふふふ…」
抱き締めて、身体をぴったりくっつけたまま見つめ合った。
智の潤んだ瞳に、笑う俺が映り込む。
「……ありがとね、翔ちゃん…」
「ん~?なにが~?」
「…俺のこと…ちゃんと話してくれた…」
「うん…今までが、逆にごめんよ…」
「そんなの…いいんだ…当たり前だし…」
そっと、智の鼻先に唇を落とした。
「…ホントはさ。みんなに言いふらしたいんだ」
「言いふらす~?」
「そ。大野智は俺の嫁だあぁ―――って♪」
「ふふふ…嫁ね~(^-^)」
「そう…大事な大事な俺の嫁♡」
「子ども、産めないけどね……って、痛ってぇ~!!
何すんだよ!」
鼻の頭に噛みつくと、智は堪らず俺の胸を押した。
「お前が詰まらない事言うからだろ!」
「…だって、ホントの事じゃんか…」
それでも智を離さないままでの痴話喧嘩。
まあ、いつものやつだな…
犬も食わないヤツ…
「いいんだよ!俺子どもなんか、好きじゃないし」
「嘘ばっか!大好きじゃ…んんっ///」
減らず口は、俺ので塞いでやった。