第5章 キミの笑顔が見たいから
「.......」
彼が、そんなふうに思ってたなんて、
正直、ビックリだった。
いつも明るくて、
元気で、
周りを明るくして.....
.....そうか。
彼が無理してるように見えていながら、
何に悩んでるかなんて、
聞いてやろうともしないで。
うわべだけで、『何でも言って』
だなんて...。
自分の浅はかさに、腹が立つ。
彼が、心で泣いてたことに、
気付いてやろうともしないで....
彼に掛けるべき言葉が、見つからない俺は、
相葉くんの痩せた背中を、
抱き締めるしか出来なかった。
「....て...」
俺の肩越しに消えるような彼の声。
「えっ?何?..何て言ったのか...」
「翔ちゃん....俺を、抱いて。」
今度ははっきりと俺の耳に届けられた言葉は、
自分を抱いて欲しいと。
俺が。
こんな雅紀を突き放せないこと、
分かってるのか、
それは、今はどうでもいいことで。
俺の腕が、
少しでも雅紀を救えるのなら、
彼を抱くことで、
ほんの少しでも、
彼に温もりを与えることが出来たら.....
俺は、
ゆっくり、
震える雅紀の唇に、
自分のそれを重ねていった。