第24章 On Special Day !!
俺の頬を両手で押さえて...
眉を下げた彼の目から、
大粒の涙が零れ落ちた。
「バカだなぁ~..泣くなよ~」
親指の腹で、涙を拭ってやると、
「翔ちゃん!!」
彼は俺に飛びついてきた。
「あぶなっ///」
バランスを崩した俺は、
その場に尻もちをつき、
その膝の間に、智がすっぽりと入り込んだ。
「...さとし..」
彼の髪を撫でると、
智は猫みたいにすり寄ってきた。
抱き締めると、甘い匂いがした。
智の匂い...
俺はその匂いを深く吸いこんで、
胸の中に閉じ込めた。
「翔ちゃん、幸せで、怖いよ。
...夢じゃないかって...」
...こんな35歳、いるか~?
愛しくて...
恋しくて...
堪らなくなった俺は
彼の顎を引き寄せて、
唇を重ねた。
そっと触れただけで離れたキスは、
心の奥のその奥まで、
じんわりと温かくした。
俺たちは、契約書の必要な箇所に、
署名と捺印をした。
いちいち二人で確認しながらするその作業が、
なんだか、婚姻届けみたいだな、
って思ったけど、
恥ずかしいから智には黙っていた。
それから、契約を待ってくれていた
不動産会社の都合もあって、
話はあっという間に進んだ。
ふたり別々ではあるけど、
月末に引っ越しが決まった。
なんだか、慌ただしくて、
もう少し、
2人の城が出来上がっていくのを、
楽しみたかったけど、
そんな贅沢も言ってられない。
...智との生活が始まる。
そう思うだけで、
自然とにやけている自分に気が付いて、
呆れた。