第11章 心のささくれ治すのは
「俺ね。この役、好きだったよ。
原作を、ちゃんと翔ちゃん流にしてたし...」
俺は、智が原作を読んでいたことに、
まず、驚いた。
一体いつの間に...そんな時間ないくせに...
「お嬢様を、しっかり守ってる感じが、
カッコよかったよ。
だから、ちょっと嫉妬したけど...」
「まあ、彼女さ、彼氏いるからね~」
居なかったら、狙ってたのか?
と言う彼に、俺は、笑って答える...
...そう。
智が、それを本気で言ってないことが、
よく分かってるから。
あの、打ち上げの写メが効いてるのも、
事実だろう。
「こんな可愛い彼女がいるのに、
他の子が目に入るわけ、ないよね~」
すると、智は、俺の方を向きながら、
「俺って、翔ちゃんの彼女なの?」
と聞いてきた。
もう、すぐそこまで来ている、
艶々な唇を見つめながら、
「彼女...じゃ、ダメなの?」
「ダメ...じゃない...」
「...っん///」
顎をちょっと持ち上げ、
その艶々に唇を落とした。
心が、ささくれて辛いとき。
いつも、隣にいてくれるのは智だ。
何か話すわけじゃないけど、
俺の気持ちをちゃんと解っていて
そのことに触れないのに、
俺を励まし、癒してくれる...
ほんとは、何でも解ってて、
敢てそれには触れずにいてくれることも、
俺には、嬉しくて、
有難いんだ。