第11章 心のささくれ治すのは
今度は『執事』だって。
その役が決まり、
俺は慌ててそのベストセラーを読んだ。
...面白い。
このお話が人気なのが、よく分かった。
主人公の執事、スマートで、切れ者で、
頭の回転がすごい。
『櫻井くんにぴったりだと思って』
製作の人は、そう言ってくれたけど。
.....プレッシャーだな。
またどうせ、2チャンネルなんかで、
『サクライ、ワロタww』
な~んて叩かれるのかな...
少しネガティブになりながら、
マンションに帰った。
「お帰り~♪」
玄関まで、智が迎えに出てくれた。
「さとしー...」彼を引き寄せて抱き締めると、
その身体は、すっぽりと俺の中に収まる。
「どうしたの?翔ちゃん...」
怪訝そうな智の、鼻に、
音を立ててキスをして、
俺は、リビングに向かった。
彼に愚痴ってみても仕方ない、
というか、
そんなかっこ悪い俺を見せたくないのが
本根かな?
「いい匂いする~...
今日の夕飯、なに?」
智は、何か言いたげだったが、
俺についてリビングに戻ると、
「今日は、ビーフシチューだよ」
と笑った。
「すんげ~美味そうなんですけど」
大袈裟に言う俺に、智はふにゃんと笑って、
「じゃあ、食べよっか」
と言った。