第8章 君のとなりで
「翔ちゃん…まだ~?」
脱衣所から掛けられた彼の声に、
俺は飛び上がった。
「いっ、今、出るよ…」
俺は、バスローブを羽織り、
簡単に髪を乾かして、
部屋に戻った。
「もう、少し食べちゃったよ…。
美味しそうで、我慢できなくって。」
そう笑った彼の前には、
シャンパンと、グラスが2個、
フルーツとオードブルが、
それぞれに盛り合わせてあった。
「何を味見したの?」
「フフッ、マンゴー、美味しいよ。
後は、魚かな~?フライみたいなやつ…。
それもいけた!」
俺は、そんな彼に、
「なんだよ~!食べて来たんじゃなかったの?」
と笑うと。
「うん、でも、そんなに食べてなかったみたい…。」
「よし、じゃあ、食べよ♡」
俺は、シャンパンを開けようと準備し、
「智くん、ドラマ、お疲れ様!」
と言いながら、栓を飛ばした。
『ポン』という景気のいい音がして、
瓶の底から透明の泡が、いくつも立ち上った。
「はい、智くん♪」
グラスを俺の方に出しながらも、
「俺…酒は…」
と、困った顔をしていた。
「いいから、いいから!」
俺が智くんのグラスに、
シャンパンを注ぐと、いくつもの泡が弾けて、
小さな音を立てていた。