第7章 慟哭の夜に
駆け込むように入ったバスルームには、
底が蒼く光るジャグジーがあり、
その脇の丸窓からは、
港の夜景が、キラキラ見えた。
頭と身体を洗い、
その蒼の中、
俺は、智くんのことを考えていた。
嵐の中では、一番年上で、
そして5人のリーダー...。
智くんは時々、
『翔くんがホントの意味で、リーダーだよね』
何て言うけど、
決してそんなことはない。
俺は、智くんがリーダーで、
ホントによかったって思ってる。
しきったり、
回したりなんかできなくてもいいんだ。
リーダーは、みんなの心の要であって欲しい。
その点、彼はまさにそれだった。
俺みたいに、細かいことは言わない。
話し合いの時も、打ち合わせの時も、
発言なんかしない。
それでも、
みんながどこかで彼のことを頼りにしていた。
最終的な結論に迷った時も、
「どうする?リーダー」
と智くんの判断を仰ぐことが少なくない。
「いいんじゃない?」
その一言で、俺たちは、次へと進んできた。
今までも、これからも、
これが、嵐の形。
その智くんが、今、
暗闇の中から抜け出せずにいる。
俺が、救わないで、
誰が彼を助けられるって言うんだ…。
蒼く光る泡の中で、
俺は次第に、落ち着きを取り戻しつつあった。