第1章 目線
「あれ?ピーター君どうしたの?顔が真っ赤!」
なんでもないよと笑って返事をする。
全然何でもなくない。
どうしたんだ僕は?
これは
なんだ?
頭が混乱していた。
単に美しいものを見たからに違いない。
そうに決まってると自分を落ち着かせた。
もうリヒトさんの方は向けなかったが、きっとこんな僕をみて笑っているんじゃないかと思った。
しばらくして、そろそろお開きにと夕食の会が終わり各自部屋に戻った。
僕と父は一緒の部屋だった。
とても広い客室にふかふかな大きなベッドが2つ用意されていて、かなり疲れていたんだろう、僕たちは部屋に戻るやいなやすぐに眠りについた。
「…はぁ…」
夜中、急に目が覚めた。
ちょっと刺激の多い日だったからだろうか、もう一度眠りにつこうとも全然眠れず、諦めて少し夜風に当たろうと部屋のベランダに出た。
ぼんやりとした月の光と、そよ風がとても気持ちいい。
目を閉じて眠気を取り戻していると
風にのってぶわっと、薔薇の香りが通り抜けた。
(そうだ、あの少女…)
急に昼間見かけた少女のことを思い出した。
そう言えば忘れていた。
この家の子かと考えたが夕食の会には来ていなかったし、そんな紹介もなかったから違うんだろう。
どうして屋敷の庭にいたんだろうと、
彼女のいた庭の方に目を落とすと
人影が見えた。
庭の奥に向かって歩いている人影
月の光に照らされて金糸の長い髪とドレスを来ているのが見えた。
彼女だ。
僕は急いで部屋を飛び出し、彼女の後を追った。
彼女の歩いていった方に走ると、高く大きな垣根の中に入っていく女の子が見えた。
「ねぇ、君!」
追いかけてその中に入った。
中は迷路のようになっていて迷子になりそうなほど広い。完全に僕は彼女を見失った。
適当に進むと道の先に開けた空間が見えた。
真ん中にガゼボがあって、どうやら人が居る。
ねえ!と、声をかけようと思った瞬間
後ろから口を塞がれた。