第1章 目線
「ほんと?^^よかった。実はこの家に大きな書庫があってね。先代たちが世界中から集めた何万冊もの本があるんだ。」
フェイ君はとんでもなく目を輝かせた。
すぐに僕と彼の“本が好き”は違うとわかった。どうしよう。地雷を踏んでしまったかもしれない。
「素敵な本ばかりでね。是非紹介したいから明日案内してあげよう!それで…君の好きな作家は誰だい?ぼくはね…」
「フェイ」
あぁ止まらなくなるかもと思ったとき、ルーク君が割って入った。
「キラキラした目させてるけど、きっとこいつそんなに本に興味ねぇよ。」
助かった。
そうなの?とフェイ君は悲しそうな顔をする。
そうだろ?とルーク君に目で聞かれて、僕は苦笑いでかえした。
「でも綺麗な絵本とか図鑑とかもあっていい暇潰しにはなるんだ。明日、俺も一緒に行こうかな」
それから明日、屋敷の回りとか他のところも紹介してくれる約束をした。二人はとても人当たりがよくて僕の緊張をほぐしてくれる。
新しい友達ができた気持ちになって嬉しかった。
そうして喋って笑ったりしていたとき、
何気なく父たちの方に目をやると、
青年と目があった。
彼は長男、リヒトさんだ。
細身で、中性的な顔立ち。
深いグリーンの甘い瞳に
ゆっくりと
繰り返す瞬きがとても妖艶で、
男の僕でも美しいと思ってしまうほどだった。
彼はゆっくりと目をそらし、父たちの方を向いた。
頬杖を着いて、頭を傾げる
そのとき見えた白い首筋に
心臓がどきんと脈打った。
「!!!」
驚いて目を一瞬でそらした。
今何が起きたんだろう。
なぜ今心臓が高鳴ったんだろう。
確かめるためにそっと
もう一度彼を見ると、
すでに彼が僕を見ていた。
どきん
また心臓が脈打った。
回りの会話や音が何にも聞こえない
一瞬、無になった。
彼はニッと微笑み、ゆっくり瞬きをする。
もう見ていられなくて急いで目を反らし、早くなる鼓動を抑えようとうつむいて堪えた。