第2章 期待
ぐい、と僕の片手を引き寄せ
腕筋をゆっくりと鼻でなぞるように嗅ぎだした
「……薔薇の臭いがする」
腕から肩へ顔が近づいてくる
鼻先が頬に触れた瞬間
「ガゼボのとこにしか咲かない薔薇の」
ぶわっと、変な汗が出た。
ドク ドク ドク ドク ……
心臓の音がリヒトさんにも聞こえてしまうんじゃないかというくらい脈打つ。
吐息もかかりそうな距離で僕の顔と向き合い
あのときと同じ笑みを浮かべた
「……やっぱり君は素敵だね」
「その眉をきゅっと…寄せあげた顔」
顎をくいとあげられる
「ぽかんと……あいた…唇 」
スローモーションのように
ゆっくりと彼の唇が近づき
僕の唇に重な…………
「ふふふ」
思わずぎゅっと瞑った目を
ぱちくりと見開いた
「期待しちゃった?」
「…………ぁ…」
ぼっっっ!! と
音をたてたと思う。
顔が燃える。
「…またね」
するりと横を抜けてリヒトさんは立ち去っていった。
ふらっと
身体中の力が抜けて本棚にもたれる。
ドク ドク ドク ドク …
まだ心臓は治まらない。
気付いたらさっき見たリヒトさんの瞳や唇
捕まれた腕の感触を反芻している自分がいた
心は逃げたかったのに
体が逃げたがらなかった
あのとき、そう感じた
「ピーター君?」
驚いて見ると不思議そうな顔をしてフェイ君が立っていた。
「ここにそんなエッチな本あった?」
下に目線を落とすので追ってみると
小高い膨らみがあった
「っっ!!!!!!!!」
はははと笑われた。
「後でその本教えてよ^^。」
「そしてほらこれ、見つけたからあっちで読もう?」
「う…うん!」
今日一番恥ずかしかった。