第2章 期待
「あの……執事さん」
「アルベルト」
「え」
「名前はアルベルトだ」
彼の背の高い位置から
睨んでいる赤い目が更に圧を強めて怖い
こんなにも無意識に人を怒らせてしまうなんて
「アル…ベルトさん……僕は何か失礼なことを貴方にしたのでしょうか?」
「目を見た」
「?」
「君は私の“目”を見た。」
そう言って不機嫌そうにアルベルトさんは立ち去っていった
目を見たとはどういう意味だろう。
初めてあったとき、確かにあの赤い目を珍しいと思ってしまった。
それがいけなかったのだろうか。
「アルくんたら」
振り返るとリヒトさんがさっきより近くにいて、思わず半歩後ずさりする。
「ハーゼ症。知ってるよね?彼、それでひどい目に遭ったみたいだから“見られること”に敏感なんだ。」
ハーゼ症
聞いたことがあった。
血液やら体液がすべて毒になる病気。
健康な人間がそれらに触れたら、その部分が一時的に麻痺して正しい機能をしなくなる。
最初は普通に生まれてくるが、
発症すると白銀の髪と赤い目になる
昔から忌み嫌われていて、病気だとわかると捨てられる子供が多く
いく当てなくさまよい続ける様子から野兎病と呼ばれたりもする
幼い頃、仲が良かった友達のひとりと急に会えなくなったことがあって
近所の人たちや違う友達がヒソヒソと彼は野兎になったとうわさしていた。
当時はよくわからなかったが
きっとそう言うことなんだろう。
もしかしてアルベルトさんも……
「すみません…」
「僕に謝ってもね」
そんなつもりはなかったとはいえ
申し訳ないと思った。
「あぁ、でも…」
「僕に謝ること、ひとつあるよね?」