第6章 嫉妬2
「土方さん、お食事お持ちしました。入りますね。」
部屋に入ると土方さんは布団から起き上がってこちらを見た。
「悪いな。」
「いえ。こういうときくらいしかお役に立てませんから。」
「んなこたねェよ。お前はよく働いてくれてる。ありがとな。」
「え、あ…ありがとうございます。」
なんだか照れ臭くて、私は慌てて土方さんに盆を差し出した。
土方さんがいただきます、と手を合わせて土鍋の蓋をあけると、ふわりと鶏の出汁の香りがした。
「今日の飯も美味そうだな。」
土方さんはそう言って優しく微笑むと、珍しくマヨネーズをかけずに雑炊を一口食べた。
「ふぅ…美味い。」
「ふふっ。よかったです。」
あっという間に土鍋は空っぽになり、ゼリーもあっという間になくなった。
「美味かった。ごちそうさん。」
「お口にあったみたいでよかったです。マヨネーズかけなくてよかったんですか?」
「ああ。せっかくこはるが俺の分だけ別に作ってくれたんだ。そのまま食いたかった。かけたほうがよかったか?」
そう言って土方さんは少しだけ意地悪そうな笑顔を見せた。
「い、いえ!別にそういうつもりでは…」
慌てて否定すると、土方さんは笑った。
私はふとさっきのキスを思い出してしまい、なんだか恥ずかしくなって俯いた。
「こはる」
「はい…」
「さっきはその…悪かったな。」
「え…?」
さっきの、ってどのことだろうか。
マヨネーズのこと?それともキスのことだろうか。
「その…熱で頭おかしくなったんだろうな。いきなりあんなことして悪かった。忘れてくれ。」
顔を上げると、土方さんは少し気まずそうな顔をしていた。
「い、いえ!気にしないでください!私も気にしてませんから!あ、じゃあ私は食器片付けてきますね!おやすみなさい!」
私は慌てて土方さんから盆を奪い取るようにして立ち上がり、部屋を出た。
「あ、おい、こはる!」
呼び止める土方さんの声も無視して私は厨房へ急いだ。
胸が、ズキズキする。