第4章 甘い約束
綺麗に咲いていた桜はあっという間に散り、代わりに緑が生い茂る。それらに陽の光が反射してキラキラと輝き出す5月。
私がこの世界に来てひと月と少しが過ぎた。
仕事にも慣れ、この世界のことも少しずつわかってきた。
散歩に出かければ、時々奇妙な姿をした人と出会う。
彼らは天人(あまんと)という宇宙人らしい。
彼らが地球にやってきてからというもの、開国を迫ってきた天人に幕府を牛耳られ、廃刀令が敷かれた。
刀を奪われた侍たちは、天人を地球から排除しようと戦った。これを攘夷戦争というそうだ。
そして、終戦後、命を賭して戦った攘夷派の侍たちは大量に粛清された。
その後も生き残った攘夷派の侍たちの中には要注意人物として指名手配中の者もいる。
驚いたのが、初日、万事屋で出会った桂さんも指名手配中だということだ。
最近では穏健派になったらしいが、少し前までは爆破テロなどやっていたらしい。
真選組の皆さんは、そういった攘夷派の侍たちを取り締まるのが主なお仕事で、いわば桂さんと真選組は敵同士なのだ。
あのとき、土方さんに桂さんの居場所を聞かれ「知らない」と言っておいてよかったと心から思った。
攘夷派の人々の中には「攘夷」を語り、ただ無意味に人を傷付けたりする者もいる。
でも私には桂さんがそんな人には見えなかった。
「どんなやつでも、攘夷派の連中はたたっ斬る。これが俺らの仕事だ。」
土方さんはそう言っていたけれど、もっと何かしら平和的解決方法はないものか…と思う。