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【銀魂】空と青

第1章 プロローグ



***





桜の時期もピークを迎え、暖かな陽射しが気持ちの良い土曜日の午後。

予定より早く仕事を終わらせ、彼を誘ってお花見をしようと、少しお高いお酒を買った。

爽やかな風に舞う桜の花びらが雲ひとつない青空へ吸い込まれていく。
路端には夜に向けて準備中の出店が並んでいる。
今年の桜は今週で最後かな、なんて考えながら軽やかにヒールを鳴らした。





鞄から鍵を取り出し開けようとすると、なにやら中から人の気配がした。
部屋の電気はついておらず、カーテンも閉まっている。
なんとなく嫌な予感がした。

深呼吸して一気にドアを開け、中にただいまと声をかけた。
玄関には、お決まりのように見慣れない女物の靴。


ちなみに、これで記念すべき10回目である。


そのまま何も無かったかのようにリビングのドアを開けると、慌てて服を着たのだろう、乱れた服装の彼と知らない女がソファーに並んでいた。

「…んだよ、今日仕事じゃなかったのかよ。」

最初こそ慌てて謝罪してきた彼だが、今ではこの様子である。さすが10回も浮気を繰り返す猛者は貫禄が違う。ここまでくると逆に笑えてくるから不思議だ。

「ごめん。」

いや待て、なぜ私が謝る。
言った後で気付くがもう遅い。
彼はここぞとばかりに私への罵詈雑言を浴びせてきた。
あまりの暴言にどこぞの知らない女も表情が引きつっている。女はしれっと自分の荷物をまとめ、「じゃ、失礼します。」と出ていった。
それを見て、はっと我に返る彼。

「ごめん、言いすぎた。」

「ううん、私が連絡しなかったから。」

「いや、俺が悪い。ごめん。嫌いにならないで。俺にはこはるだけなんだよ。」

そう言って彼は私を後ろから抱きしめてきた。
我ながら、こんな男に執着しているなんて馬鹿だなと思う。

もう、疲れた。

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