第1章 短編集
= 、それは戯れ言円舞曲。=
「好きですよ、先生。」
「そうか」
「大好きですよ、先生。」
「そうか」
「愛してますよ、先生。」
「そうか」
なまえという生徒は何かあると好き、愛してるなどと譫言、戯言を並べる。本気ではないのは分かっている。しかし、この人生で"好き"と言われる事、と言うよりその単語を聞くことすら無いに等しかったからだろうか、少しその言葉を待つようになっていた。
「先生、これで今週の罰則は終了ですね」
「ああ、では早く寮に戻るといい。そして二度と罰則にならないよう気を付けることだな。」
彼女の成績が悪いわけではない。
彼女はわざと授業で失敗したふりをして罰則を受けに来る。それは普段の彼女を見ていればすぐに分かる事だ。レポート内容に力が入っている事も、罰則で来る以外にも自ら教室で調合をしたりする事も知っている。調合の手際も悪くない、どちらかと言うといい方だ。
それなのに彼女は鍋を倒したりという初歩的ミスで罰則になる。わざととしか思えない。何故なのかは分からないが。
「先生」
「なんだ」
「先生、先生。」
「なんだ、と言っている」
「先生は私が護りますから」
「・・・くだらん、さっさと戻れ」
いつもの戯言と判断しその日は教室を追い出した。
何故か彼女の言葉が頭から離れなかった