第1章 短編集
=鬱血した林檎は青かった=
トム・マールヴォロ・リドル先生
闇の魔術に対する防衛術を担当する先生、スリザリンの寮監でもある。
先生の授業は初回から人気があった。確かに彼の授業は面白くて、分かりやすい。先生に好意を抱く生徒も少なからず居た。
私も好意を寄せていた。
皆とは理由が違うけどね。
彼の残酷な目が好きだった。
レポート提出をしようと、先生の部屋に入ろうとした。
その時に聞いたいつもとは180°違う彼の冷たい声。尤も、この声が彼の本性だと私は察したが。
「い・・・・・が・・ある」
途切れ途切れにしか聞こえなかったし単語は一つも分からなかったが、凍てついてしまうのではないかと言うほどそれは冷たかったと言うのは確かだ
「そこに居るのは誰かな?」
いつもの声色になった先生が私の目の前の扉を開けて言う
ひっ、と短い悲鳴をあげる演技をすると、大丈夫だと言って部屋に入れてくれた。
「・・・さて、君は何を聞いたのかな?」
内容によっては対処しなければならないんだけど・・・と言って先生は部屋を巡回した
「途切れ途切れで・・・何を言っているかは全く・・・」
正直に言った。怯えた表情を貼り付けて。
「嘘は、ついていないね?」
こくりと頷くと、先生は二人だけの内緒だよ、と口に指を当てて言った
「ところで、今日は何を聞きにきたのかな?」
「え、っと・・・先生、ならその・・・ご存知かと思いまして」
防衛術の先生だからと付け足した
「何をだい?」
「分霊箱について・・・です」
先生のピクリと顔が反応したのは多分間違いないと思う
「分霊箱・・・か、確か禁書の棚にも無かったと思うけど?」
「ええ、曾お爺ちゃんが独り言で言っていたので気になって・・・その後聞いてみたらこっぴどく怒られてしまって・・・」
「ハハハッ、そりゃ怒られるよ。いいかい、分霊箱と言うのはね・・・」
先生は分霊箱の説明を今までの授業で見なかったほどに楽しそうに言った。その説明内容は先生の気持ちには不釣り合いな代物だったが。