第3章 出会いは突然に
「お、おはようございます」
やっと起きたって待ってたんか。てか、誰だよお前。
「なんでまた美女薬使ってんの~?チビ太く~ん?」
……チビ太って誰だよ。
「人違いじゃありませんか?私、あなたと初対面ですよね?」
「はあ?何言ってんの?また騙してお金とるつもり~?」
「はい?」
本当にこの人何の話しているんだろう。知り合いにそっくりなひとでもいるのかな。
「私は、春川雪実といいます。チビ太さん?ではありません。ところでここはどこですか?」
肩にかけていたカバンを漁ると財布が出てきた。中に学生証が入っていたのでとりあえずそれも一緒に見せてみる。これで違う人だと思ってくれるだろうか。
「まじで別人なの?」
赤パーカーはいや、でも、とぶつぶつとつぶやいている。
「あ、あの!もう帰ってもいいですか?」
「へ!?あ!ちょっと待って待って!!」
帰ろうとする私の手を赤パーカーが掴む。まだ話すことあるのだろうか。
「なんですか」
「いや~、ごめんね?間違えちゃって雪実ちゃん」
「いえ、大丈夫です」
だから早く離してください。帰りたいです。家あるか分かんないけど。
きっとわたしは凄く嫌そうな顔をしているだろう。
「そんな顔しないでよ~。俺、おそ松って言うんだけどさ~。雪実ちゃん今から暇でしょ?間違えたお詫びとしてさー、どっか行かない?」
赤パーカーの名前はおそ松というらしい。………おそ松?どっかで聞いたような?
「いえ、大丈夫です」
「そんなこと言わずにさ~、街も案内するよ~?」
「ひっ」
そっとおそ松の手が腰にまわる。
混乱のあまり私はその手をつかんで、背負い投げた。
「あ、ご、ごめんなさい思わず」
投げちゃいました。
突然のことで受身が取れなかったのか気絶したおそ松に謝る。確実に聞こえてないだろう。
このまま起きるまで待とうかと思ったが、起きたらまたセクハラされそうだと思い、私はおそ松を放置して逃げることにした。