第5章 寄り道せずに帰りましょう。
トド松さんが走り去ったあと、家へ帰ろうと歩いていた。
帰る途中、雑貨屋さんをみかけ中へと入っていく。
「あ、これかわいい」
オレンジ色のシュシュを手に取る。
これなら家にある服にも合いそうだし、ひとつ買って帰ろう。
シュシュをひとつ買い、お店の外へでる。
「あれ~雪実ちゃんじゃーん。奇遇だね~」
「げ」
外へ出ると、赤パーカーが声をかけてきた。
「げ、ってひどくない?」
「急いでるんで」
走って逃げようとする私の手を赤パーカーがつかむ。けっこう力が入っていて痛い。
「前のお礼もかねて一緒にどっかいかなーい?ちなみに拒否権ないから」
ニヤニヤと笑いながら、肩に手をまわしてくる。赤パーカーも警戒しているようで、前みたいに背負い投げはできなさそうだ。
「はあもう面倒くさ」
「雪実ちゃんそっちが素なんだー、へぇ」
「うるさい、セクハラパーカー」
「セクハラパーカーって俺のこと!?」
お前以外誰がいるんだ。
「まあいいけど……。それより俺と遊ぼうぜ~」
「いやです。そろそろ手話さないと殴る」
びみょうに手まさぐってんの気づいてるんだよ。
「えー、いいじゃーん」
「ひゃっ」
耳にふうっと息を吹きかけられ、変な声がでる。
後ろでくすくすと笑う声がする。
「雪実ちゃんかわいーね」
「なっ、こ、このっ、変態!」
振り上げた腕をパーカー野郎のみぞおちへと振り下ろす。肘がきれいにみぞおちへとはいったようで、赤パーカーは地面へと崩れ落ちた。
「うっ、げほっ……ちょっ…」
「ご、ごめんなさい」
前もこんなことしたような。
赤パーカーが咳き込んでいるうちに私は家へと走って逃げた。
後ろからまてごらぁ、みたいな声がするけど無視して帰った。