第3章 記憶
*渉side*
えみちゃんとあの男は5年前に付き合っていたらしい。初めて本気で好きになった人。修というらしい。
修は付き合い始めはすごく優しかった。格好良くて優しく、自慢の彼氏だった。
でもささいな喧嘩をきっかけに修の本性が少しずつ現れてきた。いわゆる精神的DVというやつだった。
たび重なる暴言にも耐えて約2年間一緒にいたのは修のことが本当に好きだったからだろう。いつか変わってくれると信じていた。
でも次第に暴言と共に脅迫じみた言葉も増えてきた。「俺と別れたらお前の周りの人間みんなめちゃくちゃにしてやる」という言葉は恐怖でしかなかった。
精神的に限界を迎えそうだったある日、修はいきなり消えた。新しい女ができたのだ。
裏切られたショックよりも開放された安堵のほうが大きかった。
修がいなくなって3年。少しずつ傷も癒えてきていたはずだった。
そこに突然修からの電話。
またあの恐怖と絶望の中に戻されるのかと思うとどうしていいのか分からなかった。
自分の周りに何かあったらと思うと、警察に相談することもできずにいた。
泣きながら、でもちゃんと俺に伝えようとしてくれるえみちゃんの姿は痛々しく、今にもどこかへ消えてしまいそうだった。
だからずっと抱きしめていた。
ひと通り話したら落ち着いたのか、えみちゃんは俺の腕の中で眠っている。
頬に残る涙のあとを優しく触る。
渉「よく頑張ったね・・・」
起こさないようにえみちゃんのおでこにそっとキスをした。