第3章 記憶
*渉side*
そう男にはっきりと、でもややうつむき加減で顔を見られないようにしてえみちゃんの腕を今度は俺がつかんで歩き出した。
言い逃げに近かったかもしれない。
ほんとはもっといろいろ言ってやりたかった。
事情はわからないけど、えみちゃんが怖がってる気がしたから。
でもせっかくえみちゃんが俺を守ろうとしてくれたんだ。
その気持ちを無駄にすることもできなかった。
えみちゃんはなにも言わない。
あの男について聞いていいものか悩む。
そして映画館から離れたはいいけどどこに向かうかも悩む。
せめて行き先の相談だけでも、と思って話しかけようとしたとき、えみちゃんが先に口を開いた。
『ご、ごめんなさい。びっくりしたよね?』
渉「・・・大丈夫?」
『うん・・・私は平気・・・。でも・・・渉くん大丈夫かな?バレなかったかな?』
ーこんなに怯えてるくせに、この子はまだ俺の心配してくれるんだね・・-
渉「・・・とりあえずどっか座って落ち着こうか・・・」
渉「あー・・・ここからなら俺の家近いから、来る?嫌じゃなかったらだけど・・・」
渉「あ、なんもしないよ?!大丈夫だから!」
『・・・ふふっ。わかってるよ・・・』
『近いなら・・・ちょっとだけお邪魔しようかな』
2人で俺の家に向かった。
途中えみちゃんが「アイドルの部屋に行けるなんてレアだなー」なんて冗談ぽく言ってきたが、無理をしているのが見え見えで、こっちがつらくなった。
また俺に心配掛けないようにしてるんだなと思うと、痛々しいくらいに愛おしく思えた。