第1章 惚れ薬
カチャッと血にまみれたドアが開く。
入ってきたのはヨルだ。
蜘蛛の巣と血がついた部屋を歩いていくと、ホタルが何やらぐつぐつと煮込んでいる。
今までに嗅いだことのない、奇妙な臭いが充満している。
不思議に思ったヨルが、かまの中を覗き込んでみると、蛇やらどくろやらが黒い液体と一緒に煮込まれている。
うっと顔をしかめる。
「あ、姉上……何を作っていらっしゃるのですか?」
冷や汗を流しながらヨルはホタルにそう聞いた。
「……貴様には関係ない。」
冷たく言い放つホタル。ヨルは哀しい顔をする。
しかし、今回こそは引くまいと、ぐっと力を込めながら言う。
「関係ないことは分かっています!ですが……教えてほしいのです!」
「……黙れ。」
「お願いします!姉上____」
「黙れと言っているだろう、この愚図が。私に話しかけるな。その口縫いつけてやろうか。」
ギロッとホタルの黄色の目が光り、ヨルを見据える。
ヨルは反射的に後ずさりし、毛を逆立てる。
そして、うなだれながら、ホタルに膝をつく。
「……申し訳ありませんでした。姉上。」
「……さっさと失せろ。目障りだ。」
そう言うと、ホタルはまた作業に戻った。
ヨルはそんなホタルの背を、寂しい思いで見つめた。
「…………はい……………。」