第9章 夏休み
【鈴side】
「じゃあ鈴、また2学期にねー」
「え、夏休み中遊ばないの?」
「彼氏がいんじゃん〜」
ニヤニヤとあからさまな笑みを向けてくる怜衣と遥香。結局1学期まるまるからかわれまくったよ私…!
「か、彼氏がいようとも友情は不滅!絶対遊ぼうね、私から誘うから!」
「「え〜どうしよっかなぁ〜?」」
ぐぬぬ…っいいもん、私から連絡バシバシ寄越してやるんだからー!
…それにしても、明日から夏休みかぁ。嬉しいんだけど、なんか実感ない。
唯一の憂いだった期末テストも、イッチーのスパルタ指導のおかげで中間よりいい点取れたし、夏休みの宿題も少しずつ進めてて順風満帆なはずなんだけど…
あ、分かった。おそ松くんからのデートのお誘いが全然ないからだ。
日曜はよく会ってたのに、なんで待ちに待った夏休みに限って未だにお誘いがないんだろう?私から誘うべき?いやそれでもいいけど、ここはやっぱり彼氏からが嬉しいなぁ。
なんて考えながら廊下を歩いていると、角を曲がってきた人物と出会い頭に衝突した。
ドンッ!「きゃっ!」「…っ!」
「ご、ごめんなさい!だいじょう…」
「…………」
ひ、ひぇぇ!イッチー!?
まさに今から会いに行こうとしていた彼の思わぬご登場に、数歩後退りしてしまう。な、なんだか顔が怖い!
「ごめっ、ごめんねイッチー!私前よく見てなくて…っ」
「…………」
どうして一言も喋ってくれないの?!ご立腹なの?!
「あの
「別にぶつかったこと怒ってるわけじゃないから。僕もごめん」
「…へ?あ、はい…」
やっと口を開いてくれたと思ったら、まさかの謝罪。あわわわ、イッチーが!イッチーが素直!
前にドライフラワーをプレゼントした時も、ありがとうって言ってくれたし…なんだかイッチー、春先の頃より丸くなった、かな?
あれ、でもぶつかったことではないって…何かに怒ってるのは確かなの?だよね、全身から滲み出る怒気がすごい…!
怖いけど、聞いてみようかな。一緒に帰ろうと思ってたし。
「イッチー、何かあったの?」