第6章 紹介
自分で言うのもなんだけど、どうして俺って押しに弱いんだろう…チョロりんって…チョロりんって…魔法使いか!
「改めて、これから友達として仲良くしていこうね!」
…でも、どれだけあだ名が屈辱的だろうが、彼女自身に不快感は抱かなかった。
とにかくよく笑う子だ。天真爛漫。敵を作らないタイプ。
俺とは正反対だな。だからこそ、おそ松兄さんとフィーリングが合うのも納得できる。
兄弟として、2人の幸せを願ってはやりたいんだけど…俺にそんな素直さはない。
言葉で「おめでとう」とか「応援するよ」なんて、口が裂けても言えないだろうな。
まぁおそ松兄さんも分かってると思うし、俺はあくまで傍観していよう。彼女に積極的に関わる理由なんてないんだから。
***
家に帰ってから、テレビの前に寝転がる。おそ松兄さんは駅まで彼女を送りに行ったし、後の3人は繁華街の方に遊びに行ってしまった。
「…天川…鈴」
スマホに登録された、新たな連絡先。別れ際、彼女から交換しようと言い出した。
いくら友達になったからって、どうせ俺たち一緒に住んでるんだし、わざわざ1人1人と交換する必要はなかったと思うんだけどな。っていうか、彼氏であるおそ松兄さんの分だけで十分だよね。
こっちから連絡することもないし…女の子ってよく分からないなぁ。
「…ん?」
音が鳴る。メッセージだ。
…え、嘘、彼女から?
『さっきは会ってくれてありがとう!それと、変なあだ名つけちゃってごめんね。でも、仲良くなりたい気持ちは本物だから!今度みんなで遊ぼうね、チョロりん!』
…変なあだ名って、自覚はあったのか…。
それにしても律儀だな。きっと他のみんなにも送ってるんだろう。ま、交換しようって言った手前無視もできなくて、とりあえず最初はってだけかもしれないけど。
…嫌な奴だな、俺。メッセージくらい、素直に受け取れないのかよ。
「…これ、返事するべきなのかな」
スマホの画面を見つめ、暫し悩む。
…せっかくだから、何か返しておくか。