第14章 優しさの罪
おそ松兄さんから学んだことはたくさんある。
僕にとって、兄さんの言うことは絶対で、全てが正しいんだと。
あの一件以来、そう思うようになった。
いや、
そう思い込むようになった。
辛いから。
辛くて辛くて、生きるのが耐えられなくて、
明日にでも、一時間後にでも、一分後にでも、今すぐにでも、
自分で自分を殺してしまいたくなるから、
僕にとっての¨生きる理由¨を、
見習うべき、敬うべき、導かれるべき、¨正しい存在¨を、
それは、おそ松兄さんなんだと、思い込んで。
…兄さんの言葉に救われたのは事実だ。
けれどあの時の僕はもう、そんな言葉だけじゃ立ち直ることができないほどに傷付いていて。
結局その傷が癒えないまま…―
***
「一松、本当に別の学校に行くの?」
「僕、一松兄さんも一緒じゃないと寂しいよ!ねぇ、考え直して?」
担任に聞いたのだろう。僕の進学先を知った兄弟たちが、みんなして僕に考え直すよう訴えてくる。
…無駄だよ。だって僕は。
「…ごめん。もう決めたことだから」
唯一、おそ松兄さんだけは僕の選択を受け入れてくれた。
『一松自身がそう決めたならそれでいい』
実に兄さんらしい…そんな一言を添えて。
***