第13章 本音
余計に話し辛い…!さっきからおそ松くんが何か喋るたび、吐息が耳にかかってくすぐったいし…!
「鈴ー。…今日は俺、諦めないよ?」
「!」
…諦めない。それはつまり、もう言い逃れはできないということ。
私はこれまで、彼に散々隠し事をしてきた。
その隠し事というのが、大体イッチー絡みで…二人の関係を壊したくなかったし、おそ松くんにどう思われるか怖くて仕方がなかったから、どうしても言えなくて。
そんな私の迷いを汲み取ってくれたのか、彼はいつも深くは追及してこなかったけど…
もう…限界みたい。
隠し続けるなんて無理に決まってる…分かっていたはずだ。
…でも…
それでも…っ
「…ごめん、なさい…」
「…鈴」
言えない…その答えは変わらない。
おそ松くんはきっともう、何かに気付いてる。じゃなきゃ、わざわざ学校をサボってまでここに来たりはしない。
仮病のこともさほど驚いていなさそうだったし、最初から全て見抜いた上で、あえて私から聞き出そうとしてる。
私の口から聞きたいんだ…真実を。
「…じゃあ、別の質問」
「?」
「鈴ってさ。…俺のこと、本当に好きなの?」
「……え」
…一瞬、時が止まったかと思った。
彼の言葉が反芻して、頭の中に響き渡り…同時に、今朝見たあの悪夢が甦る。
『鈴はさ。俺のこと、好き?』
「…あ…」
…嫌だ。
「鈴は俺のどこに惚れて、付き合おうと思ったんだ?」
『お前、俺のどこに惚れたの?』
…やめて…
「出会いがあんなだったから、鈴のこと勝手に運命の相手だって思ったわけだけどさ」
『入学式の日に偶然出会って、お互いに恋に落ちた。これっていわゆる運命かな?って思ってたんだけど』
これ以上は…聞きたくない…!
「もしかしたら、そうじゃなくて…
「お願い、言わないで!!」
「…っ!」
自分の中の何かが耐えきれずに暴発する。…こんな大声を出したのは久々だった。
「…あ…」
感情の昂りが徐々に醒めていく。恐る恐る彼の様子を窺うと…
口から魂が抜け出そうになっていた。
Σ「お、おそ松くん?!」
「鼓膜破けたァ…」
「えぇぇ!?」