第3章 告白
くるりと方向転換する彼の腕を、咄嗟に掴む。
「ま、待って!」
「!」
何やってるの、私…今はそれどころじゃないのに。
でも、伝えたい。…言わなきゃいけない気がしたんだ。
「わ、私、天川鈴っていいます!あなたの名前を教えてください!」
「…名前?松野おそ松だけど」
きょとんとしながらも、彼は名乗ってくれる。
松野、おそ松くん…い、いきなり名前呼びは失礼だよね。
が、がんばれ、私!
「ま、松野くん、好きです!私と付き合ってくださいっ!!」
「…………は」
―未だかつて、ここまで時と場所を考えない告白があっただろうか。
反応が怖い…彼の顔を見ていられなくて、ぎゅっと目を瞑る。視界が塞がれたせいか、耳に聞こえる雨音が、やたらうるさく感じた。
…フラれる。だって急すぎるもん。
会ったばかりにも程があるし、彼はそんなつもりで私を傘に入れてくれたわけじゃないのに。
でも…落ちちゃったんだ。
これが私の…初恋。
それが例え失恋として苦い思い出になろうと構わない。伝えられずに後悔するより、伝えて後悔する方がよっぽど…
「…!」
…唇に、何かが当たる感触。
ぱちっと目を見開く。
0距離に、彼の顔。
……キス、されてる?
理解した瞬間、まるで時が止まったかのように、何も聞こえなくなった。
彼しか見えない。
ほんの少しだけ唇が離れて、彼は囁くように言う。
「…いいよ。付き合おっか、俺たち」
さっきまでの無邪気な笑顔は消え、熱っぽい瞳で私を見つめてくる彼。
同い年なはずなのに、すごく大人びて見えて…私の心臓が、一際大きな音を立てる。
「い、いいの…?」
「うん」
嘘…絶対フラれると思ってたのに…
か、叶っちゃった…私の初恋…
「じゃ、今日から鈴は、俺の彼女な?」
「えっ!」
彼は不敵な笑みを浮かべながら、私の手を取り指を絡める。
ドキドキが収まらない…彼に見惚れてしまう。
「うん…これからよろしくお願いします、おそ松くん…!」