第13章 本音
【鈴side】
「鈴、おーい、鈴」
誰かが、私を呼んでいる。よく知っている声。
「鈴〜?起きねぇとキスするよ?」
「…!?」
飛び起きる。目の前にはいたずらっぽく笑うおそ松くんがいた。
「お、やーっと起きた。俺は別にキスしてもよかったんだけどな〜」
「ね、寝込みは襲わない主義じゃなかったの?」
「ん?まー、時と場合による?」
「もうっ」
相変わらずの彼の態度に呆れながらも、つられて笑ってしまう。
ここは…どこだっけ。教室?あれ、なんで私、おそ松くんと同じクラスにいるんだろう?
…まぁ、いっか。
「なぁ、俺腹減った!購買でなんか買ってさ、屋上で食べようぜ」
「うん、そうだね。じゃあ行こう」
二人で手を繋いで廊下に出る。もう昼休みだったっけ。
それにしても、他に生徒いないなぁ。みんな食堂?
まぁ、これも別にどうでもいいや。
「…あ、そうだ。私お弁当作ってきてたんだった」
「マジ?なんだ早く言えよ〜」
「待ってて、今取ってくる!」
教室に戻り、カバンから弁当包みを取り出す。
…あれ、私…朝こんなの作ってたっけ?
んー、作ったんだろうなぁ。だってあるんだし。
「おまたせ!行こっ」
屋上に出ると、秋の始まりを告げる涼しい風が吹き抜ける。
「気持ちいいねー」
「そう?ちょい寒くない?」
「えー、そうかなぁ。あ、あの辺りに座ろう」
彼が寒がるといけないので、ちょうど入り口の影でなるべく風が当たらない場所に並んで座る。
「今日のお弁当は自信作だからたくさん…あれ?」
さっきまで手に持っていた包みがなくなっていることに気付く。おそ松くんに奪われたと思い彼の手元を見るも、どこにもない。
「う、嘘、ちゃんと持ってきたはずなのに…
「鈴」
「っきゃあ!」
彼が突然、私を地面に押し倒す。
「お、おそ松くん…?」
なぜだか、彼の顔がよく見えない。まだ昼間で明るいのに、表情だけ靄がかかっているようで…