第10章 憂鬱
【おそ松side】
宿題をやり始めて数時間。その時はついにやってきた。
「だーーーっ!もう無理ぃぃーーーっ!お兄ちゃん死んじゃうぅぅーーーっ!!」
「うるさいよ、おそ松兄さん。ほら、次こっちの問題集」
「鬼!人でなし!俺が死んでもいいのかよ?!」
「大丈夫、バカは死なないっていうし」
「誰か助けて!話が通じない!!」
駄々をこねまくる俺にようやく観念したのか、一松は本日初の休憩を取らせてくれた。はぁ、短い時間だけど解放感半端ねぇ…。
とりあえず足を伸ばして床に寝転がる。ずっとあぐらをかいてたせいもあって体の節々が痛い。頭も少し。くっそ、これだから勉強は嫌いなんだよ。
「なんか飲む?」
「おー…じゃ麦茶で」
「分かった」
台所に消えていく一松の背中を見送って、俺は瞼を閉じる。眠るわけじゃないけど、疲れた目を休ませたかった。
あ、でもやばい、急に眠気が…まだ続きがあんのに、一松に怒られちまう。
閉じていた目を見開き、体を起こす。正直このままサボりてぇけど、マジ必死にやんねぇと宿題全部終わらないからな…新学期早々お叱りは受けたくない。
「…はい、兄さん」
「お、さんきゅー」
ちょうど台所から出てきた一松から麦茶の入ったコップを受け取り、ぐいーっと一気飲みする。カラカラだった喉が潤い、ダウン寸前だった心と体が生き返る。
「…よし、再開するか!」
「え、休憩もういいの?」
「うん、このままだらけてっと寝ちまいそうだしさ。さっさと片付けて楽になりたい」
「…そ。なら頑張って」
一松は素っ気なく返事をして、さっきまでと同じように部屋の隅で膝を抱えて座る。監視モードスイッチオンってか?
いや、監視は別にいいんだけどなーんか落ち着かねぇんだよなぁ。当たり前かもだけど一松のやつ一言も喋んねぇし。分からないことを俺から質問したりはするけど、それ以外はひたすら無言で俺を見つめてくるだけ。なんか怖くない?
手元さえ動かしてりゃ、雑談くらいいいよな?今日のところは後この問題集だけだし…
「一松〜。お前も暇だろ?なんか話さない?」
「え、何言ってるの。そんなのいいから宿題に集中しなよ」
あー、うん。一松らしい返答ですわ。