第3章 告白
【鈴side】
「な、なんで…」
駅のホームから出た私は、外を見て愕然とする。
「なんでこんなにどしゃ降りなのー!?」
空に立ち込める真っ黒な雨雲。そこから容赦なく地面に降り注ぐ、大粒の雨。
人々が平然と傘を差して忙しなく行き交う中、私はその場から一歩も動けずに叫んだ。
天川 鈴、15歳。今日から高校1年生。
入学式当日早々、幸先が悪すぎる…!!
「は!そうだ、売店に…!」
私はUターンして急いで売店に向かう。
しかし…
「う、売り切れ…!?」
傘が売っていたらしきスペースは、すでにもぬけの殻だった。
そんなことってあるの?!…あぁ!今レジに並んでる人、ビニール傘持ってる!あれ絶対最後の一本だ!
僅かな可能性にかけて、その人(おじさん)の方をじーっと見つめてみる。
すると、私の念力が通じたのか、おじさんがちらりとこちらを見て…
(おぉ!?ゆ、譲ってくださる?譲ってくださります?)
目が合ったまま、お互いに制止すること約5秒。
「次の方こちらにどうぞー」
「あ、はい」
しかし、おじさんは横の空いたレジにさっさと精算しに行ってしまった。
がくん、と項垂れる私。まぁそれはもちろん仕方のないことなんだけど、
「……(ニヤリ)」
Σ「!?」
傘をお買い上げしたおじさんが、私を一瞥して嘲笑ったのだ!そのまま無視すればいいところを、あえて!
普通女子高生が困り顔で念力を送っていたら、良心が痛むなり哀れに思うなりするものじゃないの?!それを嘲笑うって!うぅぅ、私が可愛くないからか!美少女だったら絶対譲るんだよ、ああいうタイプのおっさんは!
………はぁ、疲れた。もうやめよう。あのおじさんは何も悪くない。傘を持ってこなかった私が悪いんだ。
天気予報じゃ晴れだって言ってたのになぁ…ゲリラ豪雨ってやつかな。こんな朝からそれはまぁご苦労なことで。
再び出口に向かう。…さっきよりは少し落ち着いたかな?
「…よし、走ろう!」
新品の制服やカバンを濡らすのは忍びないけど、このまま立ち往生していたら入学式に遅れてしまう。
私はカバンを頭の上に掲げ、全速力で駆け出した。