第10章 憂鬱
「…それ、他には誰も?」
「知らないよ。教えたのはチョロ松兄さんが初めてだもん。っていうかずっと黙ってるつもりだったし」
「…お前…」
…正直トド松のことは、末っ子のくせに生意気で小憎たらしい奴だとばかり思っていた。
嫌ってたわけじゃないし弟として大事ではあるけど、俺とは波長が合わないタイプだとばかり。
しかし、その考えは間違っていた。
俺たちは6つで1つ。違うと認識していてもそれは表面上だけで、根本は同じなんだと、ここにきてようやく気付く。
「…はは」
「チョロ松兄さん?」
「なんていうか、俺たち…似た者同士だよね。黙ってるつもりって言ったけど、俺の気持ちが分かった時点でお前、どうせ打ち明けるつもりだったんだろ?」
トド松が驚いたように目を見開く。そして今度は優しく微笑んだ。
「…まぁね。憐れみ合った方が辛さも緩和するかなと思ったんだ」
「はっきり言うなよ……でも、ありがと。一人で悩むのも…そろそろ限界だったからさ」
「どういたしまして」
すっ、と、肩の荷が下りる。本気で恋をしていたトド松に比べれば、俺の悩みなんて些細なものだったかもしれない。
でもこういう時こそ実感するんだよな。…兄弟がいてよかった、って。
まぁ、その兄弟が原因でこんな思いをしたんだけど。だからといっておそ松兄さんを責めるのはお門違いだ。それくらいの分別はつく。
何より俺もトド松も、心は傷んだとはいえ望んでいるのは兄弟の幸せだ。
「…トド松」
「うん?」
「十四松が帰ってきたらさ。あの質問の答え、ちゃんと伝えよう」
***
「二人ともどうしたの?僕に話ってなに?」
「あー、うん…十四松兄さん、夏休み前に僕らにした質問、あれ覚えてる?」
「質問?えーと、えーっと…あ!き○この山がいいか、た○のこの里がいいかってやつ?!」
「いや確かにそれも議論したけど、そっちじゃなくてね?」
「んーと…あ!アボガドなのかアボカドなのか!」
「じゅうしまぁぁぁつ!!わざとなの?こいつわざとやってんの?!」