第8章 猫王子と夏休み
「…俺はどうバスケをしていいか分からなくなったッス。昔は強すぎて1人でプレイしていた。高校でも同じようにやれば勝てると思ってたのに負けた。
ある人が教えてくれたんス。仲間に頼る事は弱いことではない。むしろ強さが必要だって。だから今回俺は最後仲間を頼った。だけどそのせいで負けた。結局何が正しかったんスかね」
『…アンタばか?』
「はぁ!?ちょ、バカって何スか!」
『だってバカじゃん。いちいちそんな事考えてバスケやってんの?』
「えっ…」
『競技は違うけど、あたしはバレーする時にそんなめんどくさいこと考えてない。ただ勝ちたくて必死なだけ。アンタが負けたのは、自分の意志が弱かっただけ』
「自分の、意志…」
『迷う事は悪い事じゃない。そうやって強ると思うし。あの時アンタが仲間を信じるって決めたのなら、何にも流されずに仲間も、自分も信じなきゃいけなかった』
仲間も、自分も…
『昔自分を信じてバスケしてたなら、今度は仲間を信じれば最強なんじゃない?ただし、同時に信じれる器用さがアンタにあればだけどね』
「俺は…」
『って…あたしこんな説教じみた事ガラじゃないんだよね。って事で今すぐ自販機の角に頭ぶつけて忘れろ。3秒以内で』
「そんな無茶な!!!」
『ま、アンタがどうなろうがあたしには関係ないし。ただ黙ってられなかったから言っただけ。赤司にも頼まれたしね』
「赤司っちに?」
『アイツも心配なんだyひっ!!!!やばい!今悪寒走った!!!ちょ、赤司近くにいないか見てくれ!!!』
赤司っちに怯える姿は、今まで見てきた他の女の子と何一つ変わらなかった。だけどさっき俺に言った姿は、とても眩しく輝いていた。
「…いないッスよ。それより名前、教えてくださいっス!」
『嫌』
「ひどっ!!ったく、他の女の子だったら喜んで教えてくれるのに」
言いながら思った。この女の子は普通の女の子とは違う。
『一緒にすんなっつーの。じゃああたしは帰るよ。もう会う事はないと思うけど』
「…そッスね」
『…』
「…え?」
『。あたしの名前だよ。またね、黄瀬涼太』
俺の頬は凄くだらしなく緩んでいたと思う。なぜか彼女に認められた気がして嬉しかった。
「またね、っち!!!!」