第8章 猫王子と夏休み
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バスケ部は玲央さんを始め、凄く話しやすい人達ばかりだった。奈央達マネージャーの先輩もとてもいい人だった。だけど麗華ちゃんとは…話していない。
『無視、されてるんだよね…』
奈央「んー?何か言ったー?」
『ううん!何でもない!さぁ、出発しやがれぇぇぇぇ!』
奈央「ひっ!バカ!!ここは教室とは違うんやで!?出発するかどうかは監督が決めるんや!」
監督「ははは、いいよ川崎。みたいな元気な生徒は久しぶりだ。それじゃあ出発しよう」
奈央「…あり得へん…あの堅物な監督までアンタの世界に連れ込むなんて…何者やねん…」
『ちゃんでっす☆コアラの●ーチ食べる?』
奈央「いらへん…もう皆集中してはるからそれ食べて静かにしとけ…」
ムゥっとしたけど、そうだよね。皆勝ちに来てるんだよね。いくらあたしでも空気は読める。お菓子をしまい窓の外の景色を眺めているとスマフォが振動した。
もう定着した猫王子という名前が表示されており、メールの内容を確認すると、あたしは席を立った。
『どしたん王子ー。って何で王子だけ1人で座ってるの?セレブなの?そのドヤ顔にでこピンしてもいいの?』
「僕は主将だからこういう待遇なだけだよ。ほら、危ないから座れ」
『あ、うん。どっこいしょと』
「そんな掛け声どこで覚えたんだ。まだ若いのにダメだろう?せっかくの可愛さが台無しだ。その服、似合ってるね」
『すいませーん、このバスちょっとクーラー効きすぎなんじゃないですかー?鳥肌総立ちなんですけど』
「ははは。照れない照れない」
『照れてねーよ!鳥肌で照れるってどういう心境!?で、あたしを呼んだ理由は何?』
メールの内容は"こっちにおいで"と一言だけだった。
「黙ってばかりじゃポチが退屈すると思ってね。話し相手になろうと思ったんだけど」
『…別に退屈なわけじゃないよ。だけど少し思い出しちゃったかな』
「何を?」
『1か月前にはこうしてあたし達もバスに乗って会場に向かってたんだなって。ま、もう気持ちは前向いてるからいいんだけどね。ってごめん!今から試合なのに…』
「構わないよ。思い出すものは仕方ない。我慢しなくてもいい」
赤司はゆっくりと優しくあたしの頭を撫でてくれる。
『…うん』