第5章 猫王子とテスト
…やばい。女子の部屋だと認識した途端に居辛くなってしまった。自慢じゃないが、女子の部屋など入った事もない。
『赤司ごめん。コーラ向こうの部屋に持って行ってちょーだいなっと』
「…分かっt!!!!!」
『ふぁっ!?ちょ、何やってんの!?』
からグラスを受け取った際、手が触れてしまった。その時電気が走ったように感じて思わず手を引っ込めてしまった。その反動でグラスが落ちていく。落ちるのとは反対に、上がっていく心拍数。そしてグラスが割れる音が響いた。
「す、すまない…今片付ける」
『は!?ちょ、ストップ!手切っちゃうじゃん!動かないで!待て!ハウス!!!』
「…僕は犬ではない。犬はお前だ」
『そんな事どうでもいいからさ!タオル持ってくるから、絶対に動かないでよ!!!てか動くな!!!』
はパタパタとスリッパを鳴らしながら洗面所へと向かって行った。大人しく僕もその場で待つ。
『おー、偉い偉い。ちゃんと待てたんだね。ほら、危ないから下がってて』
「いや、僕がやる。は箒と塵取りを持ってきてくれ」
『へへへー、実はもう持ってきてるんだなこれが!凄くね?ちゃん優秀じゃね?』
「…すまない」
『…赤司!?アンタ本当にどうしたの!?一度ならず二度までも謝るなんて…熱でもある?』
「っ!?」
が僕の額に手を当てる。近い。近い近い近い!僕は衝動的に振り払った。
『いった!何すんのさ!!!うわー、脛打った!絶対これ痣になるよ…どう落とし前つけてくれんだコラ。あぁ!?』
「…帰るよ」
『はぁ!?ちょ、一緒に勉強しようって言ったじゃん!教えてくれるって言ったじゃん!数学は!?』
「すまない。自分で勉強してくれ。グラス、また弁償するよ」
『…ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!!』
の叫び声を無視して玄関に向かう。一体どうしたんだ、僕は。に触れられた部分がまだ、熱い。