第19章 猫王子と誕生日
『…うん、コレ赤司に似合いそう』
そう言って選んでくれたのは、黒をベースとし、文字盤は白のローマ数字で描かれた、一言で言うならカッコいい時計だった。
周りにあるような年寄り臭い物でもなく、かといって子供っぽくもない。まるで大学生が付けるような時計。しかし、見れば見るほどにかっこよく、センスで溢れ返っている。
『どう?』
「…カッコいいな」
『でしょ?赤司に似合うと思うんだけど』
「あぁ」
『じゃあこれにする!貸して』
手渡そうとして、僕の手が動きを止めた。値段がチラリと見えてしまったのだ。
『どうしたんだよ。早く貸して』
「これはまた今度自分で買うよ」
『は?何で?』
「…こういう事を言うのもなんだが、値段が張る。別のもので十分だ」
『はぁ?やだよ、あたしはこれを赤司にプレゼントしたい』
は僕の手にある時計を奪おうとするが、僕はそれを許さない。撮られまいと必死に攻防戦が続く。
『…チッ、コノヤロー』
「こそ往生際が悪いぞ。諦めてくれ」
『嫌だ』
「…どうして」
『あたしはそれがいい。赤司にそれを付けてほしい。値段とか関係ない、あたしは赤司にそれをプレゼントしたいんだ』
一瞬怯んだスキを見て、は僕の手から時計を奪った。そしてすぐにレジへ向かう。慌てて追いかけるが、レジは運悪くすぐそこにあった。
はテキパキとお金を払い、店員も負けじとテキパキと作業をこなす。数分後には綺麗にラッピングされた箱をから手渡された。