第19章 猫王子と誕生日
『ねぇ赤司、何が欲しい?』
「が選んでくれるのなら、何でもいいよ」
『出た、何でもいい。それが一番困るんだよな~』
「それが僕の答えだから、仕方がないだろう?」
『じゃあおにぎりとかでもいいわけ?』
「が僕の事を考えて選んでくれたおにぎりならね」
『…冗談だっつーの。赤司の事だから、そのおにぎり開封せずに腐らせて、そのまま飾ってそう』
「よく分かったね」
『ガチかよ!冗談で言ったのに!つーか怖ぇよ!選びにくいわ!』
僕がクスクスと笑っていると、から睨まれた。だが、可愛いだけで怖くもなんともない。余裕そうな表情をしていると、諦めたのかは前を向いた。
すると、ふとある店が目に留まる。時計専門店だった。時計か、そう言えば先日壊れたばかりだったな。
『…ここ入る』
「…え?」
『いいから、入るよ!』
に腕を引っ張られて入った店は、紛れもなくさっき僕の目に留まったあの店だった。が欲しいものでもあるのかと思ったが、そこはメンズ用の時計の専門店。
店員「いらっしゃいませ!何かお探しですか?」
『あーいいです。自分で選びますので』
の手はいつしか離れ、今では1人寂しく重力に逆らうことなくだらしなくぶら下がっている。とりあえず、の元に向かう事にした。
「どうして時計なんだ?」
『え、いらないの?』
「いや、そういうつもりで言ったわけじゃないよ」
『だって赤司、この店見てたじゃん』
「…よく見てるんだな」
『…うっさいバカ赤司』
が僕の事を見ていてくれた事が嬉しい。今、こうして僕に似合うものを探してくれているのが、嬉しい。