第17章 猫王子と訪問者
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「ちゃん!」
『?…桃井さん』
「さつきでいいよ、ちゃん」
『…じゃぁ、桃ちゃんで』
「うん!改めて、よろしくね!」
『うん。…それじゃあ』
「待って!!!」
再び背を向けた時、桃ちゃんに引き留められた。どうしよう、後ろからこちらに向かって走ってくる2つの足音が聞こえる。絶対、青峰と赤司だ。
「お願い、ちゃん。ちゃんに京都を案内してほしいの」
『ごめん、桃ちゃん。赤司に任せてよ』
「私、もっとちゃんとお話ししたい。ダメ?」
ぐっ…乙女の、しかもかわいこちゃんにおねだりされたら…いや、ここで揺れ動くくらいの意志ではない。負けるなあたし!
『また今度東京に帰ったら遊びに行くよ。だから…』
あぁ、遅かった。足音が近くで止まる。と同時に右手首を掴まれた。今は赤司の近くにいたくないのに。
「」
『離せ』
「僕じゃ頼りないか」
『…離せ』
「僕じゃの力になれないのか」
『…離してよ』
「僕じゃを支えられないのか」
『…はなs』
ふわりと赤司の匂いが鼻を掠めたと思ったら、赤司に抱きしめられていた。顔が赤くなるのが分かった。心臓がバクバクと動いているのが分かった。
人前でこんな事されて、動揺してるだけなんだと言い聞かせる。…いや、昔はあたしが人前でも赤司に抱き着いていた。
「僕を信じろ、そして頼ってくれ。僕はを一番思っているよ」
分かってる、分かってるんだ。神様の元から呼び戻してくれた赤司が、あたしを思ってくれている事くらい。あたしが赤司に甘えている事くらい。
だから、嫌なんだ。