第15章 猫王子と修学旅行
「…どうしてこちらを見てくれないんだ」
『…何となく』
「…は?」
『嘘。泣いちゃいそうだから』
「…検査、したのか」
『うん。命に別状はないよ。記憶もちゃんとあるし。あ、視力はめっぽう下がったけどね』
「視力、が…」
『そんなに重く受け止めないでよ。矯正すれば元のように見えるらしいし』
「ならなぜそんなに…まさか…」
『靭帯、痛めたんだって。これもまた一生出来ないわけじゃないけど、3か月。1年の4分の1』
少し、ホッとしている自分がいた。一生の傷ではない。
「3か月なんてあっという間だ。一生不可能なんて事にならないで良かったじゃないか」
『…両親にも言われたよ。…赤司は違うって思ってたのに』
そうだ、3か月だ。短いようで長い。その間中大好きなバレーを…いや、僕自身がバスケが出来ないとなれば…
「すまない、軽率な事を言ってしまった。だが最初に言っておく、さっき言った事は事実だ。がバレーを大事にしている事は知っている。一生の傷にさせたくなかった。だが、3か月の生き地獄となるな」
『…』
「僕でも気が変になりそうだ。、今回の事、迷惑かけた、心配させたと思っているかい?」
『…そりゃ思うよ。あたしがもっと警戒していればこんな事にはならなかった。いらない心配かける必要なかったのに』
「だったら今こそ恩返しをすればいい」
『…恩返し?』
「が部を支えるんだ。皆のために行動し、皆が良い環境で部に専念してもらえるように。そうだな、マネージャーとか」
『マネージャー…』
「クラスの皆には勉強でも教えればいい。数学は…壊滅的だが、それでも必死に勉強して、教えてやればいい。もうすぐ期末テストもあるしな」
『あたしが…』
「お前が皆に対して出来る事なんていくらでもある。だから下ばかり向くな」
はゆっくりと僕の方を見た。綺麗な瞳から、綺麗な涙を流して。
『…ありがとう、赤司。今目が見えなくて良かった』
「…どうして」
『今赤司を見ると…好きになっちゃいそう』
「…え」
僕としてはそちらの方が嬉しいんだけど。