第15章 猫王子と修学旅行
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『赤司、本当にありがとう』
「気にするな」
『あのね、あたしがこっちの世界に戻ってこられたのは、紛れもなく赤司のおかげなんだ』
「?」
『意識を失っている時、あたしは俗に言う幽体離脱をした。そこで神様に会った。神様は魂だけがこっちに来たって言ってたけど』
「…えらくファンタジーだな」
『だけど事実なんだよ。そこで神様に、こっちの世界に戻るための条件を言われた。こっちの世界であたしが帰ってくる事を1番に望む人に、あたしを見つけてと願う事』
「一番…?」
『神様の世界では想いの強さが数値化されてるんだって。その数値が一番高い人にだけ、その人を信じて祈る事』
赤司はそうか、と疑う素振りも見せずに信じてくれた。その事に嬉しさが湧く。
『いっぱい悩んだ。奈央もいるし、バレー部で相棒のはゆるもいる。春は…まぁ知らないだろうから除外したけど。それに、赤司も』
「僕は1番を思える自信があるよ」
『あはっ!そうだね。だからあたしも赤司を選んだ。お願い、あたしを見つけてって』
「僕も聞こえたよ。が見つけてと僕を呼ぶ声が」
『だからこそ、ちゃんとお礼を言いたい。あたしを見つけてくれて、あたしを1番に思ってくれてありがとう』
「こそ、僕を信じてくれて、僕を選んでくれてありがとう」
あたし達はお互いにクスリと笑い合った。顔がぼやけて見えないけど、赤司は嬉しそうだったと思う。
『…神様ー!!!』
「ここは病院だぞ。…って言っても聞かないだろうな」
『あたりっ!神様ー、聞こえてるー!?あたし、無事に生還出来たよ!あの時背中を押してくれてありがとう!あたしは悔いのないように生きていきます!だから見守っててね!!あ、やっぱ神様、赤司に似てるよ!!』
「何だそれは。初耳だぞ」
『あははっ!!!』
ムッとした様子の赤司は、やっぱりあの時の神様に似ていたわけで。それが可笑しくてひたすらに笑っていたら、どこからか風邪が吹いた。
―――「もうこっちに来るんじゃないぞ。それと…やはり似ていない。………元気にやれ」
『!?今声が…』
「?何の事だ?」
どうやらあたしにしか聞こえてないらしい。最後まで赤司にそっくりだった。
『ふふふっ…神様のばーか』