第14章 猫王子と秋模様
赤司がただの王子じゃなくなってから数日。無事にパーカーデビューも果たし、あの赤の練習着も何回か着た。だけどそれ以外、特に変化なく過ごしてきた。
奈央「あかん…腹痛や。次の授業、保健室おるわ」
『ちょっと待て。さすがにやばいから、さすがに3回連続保健室は限界あるから』
奈央「…限界も何も、事実やもん」
「今日の朝練では元気そうに見えたが」
奈央「ちゃう、今朝はやせ我慢しとってん。部活に体調不良なんかで迷惑かけられへん思てな」
『苦しい!言い訳苦しいから!つーかマジで成績に1つくよ?』
奈央「ぐっ…それはアカン…他の種目で挽回や!」
「2学期の主な配点はこの種目みたいだよ」
奈央「悪魔や!ウチを進級させへんようにするつもりや!」
『いや、だったら頑張れよ。長距離くらい』
あの運動音痴の奈央ちゃんが、体育の中で最も嫌いな種目、長距離。多分どこの学校でもこの時期になると嫌でも走らされるだろう。まぁ、あたしは規定の距離なんて楽すぎるけど。
その奈央は今まで行われた2回の長距離練習も、今と同じように保健室に逃げていた。さすがに先生も注意するレベルだ。しかも、今日の体育は1回目の計測の日。これを休むのはかなり成績に響く。
『別に遅くてもいいんだからさ、とりあえず走ろうよ』
奈央「嫌や!さては、アンタ先生の回しモンやな!?そんな安い言葉には騙されへんよ!」
『ちげーよ!奈央の心配してんだよ!』
奈央が体育を休んで進級できずさようならなんて嫌だ。もし別れたとしてもずっと友達でいる自信はあるけど、やっぱり学園生活の思いでは奈央と作っていきたい。
奈央「…分かったわ。に心配されたら出るしかあらへんな」
『奈央…ありがとう!本当にありがとう!!!』
「感動しているところ悪いが、早く出て行ってくれないか。男子が着替えられなくて困っているんだが」
『見られて困るモンじゃねーだろ?』
男子生徒「女子の発言やないわ!!!」
と、男子共をからかい、あたし達も女子更衣室へ向かった。