第11章 猫王子と文化祭
確かにはソファに座っていた。見間違えるはずもない、紛れもないだった。
「…」
僕が名前を呼ぶと、は肩をビクリと震わせゆっくりと振り返って僕を捉えた。
『…赤司』
僕達は暫く、無言で見つめ合った。
『来ないかと…思ってた』
「…それは僕の台詞だよ」
『だってそれは…誘ったのはあたしだし。約束は破りたくないし』
「…そうか」
会話が途切れる。違う、僕はこうなりたくて気持ちを伝えたわけではないのに。
『と、とりあえず…行く?』
「…そうだな」
『うん…奈央がさ、地図送ってくれたんだけど…あたしこの場所知らなくって。赤司、地図読める?』
「問題ないよ。見せて」
『うん』
地図を頼りに歩く。寮からそこまで離れていない場所にあり、10分も歩けば辿りついた。もちろん会話なんて存在しない。何より、僕の隣にはいなかった。
「着いたぞ。何か食べるか?」
『…少し食べてきたから大丈夫。赤司は?』
「僕も大丈夫だ」
そして困った。祭りに来たはいいが、何もする事が無い。以前なら楽しかったはずなのに。
「…?」
今どういう顔をしているのか確かめようと思い、チラリと後ろを振り返ればどういう事か、がいない。はぐれた。久しぶりの祭りということもあり、人で溢れ返っていたから、きっとはぐれてしまったんだ。
「…!!」
今まで歩いてきた道を反対方向に走る。人ごみをかき分けながら、必死にを探す。大丈夫だ、僕がを見逃すわけがない。
『…だよ!!!…せ!!!』
そしての声を聞きとった。間違いない、あの木の向こう側だ。