第2章 猫王子と出会う
赤司side
僕としたことが、監督に頼まれた資料を忘れたため教室に戻ったのにも関わらず、その資料をさらに忘れるとは。
教室に着くとまた僕の事を話している声が聞こえた。そしてそれはまたも同じ人間。たしか川崎奈央。バスケ部にマネージャー志望届を出していた者だ。
僕はじっと話終わるのを待った。そしてさっきと同じように話終わってから出て行こうとする。だけど足は止まった。
『え?それ当たり前の仕打ちじゃない?』
奈央「は?」
…は?少なくとも女性なら恐怖心を覚えるはずだ。今までだってそうだったし、今だってそうだ。現に川崎は僕に恐怖している。
『いや、誰でも自分の邪魔されたら怒るよ。あたしならこてんぱんにしてるし!見てこのパンチ!シュッシュッ!』
奈央「はぁ…はいはい。アンタのパンチじゃ蟻1匹も殺せへんよ。もちろんあの魔王様もね」
『魔王様?』
奈央「黄瀬君っちゅー別のキセキの世代が中学時代のモデルのインタビューで言ってたんや、赤司君の事」
「『魔王、ね』」
声が重なった。他の誰でもなくさんと。
『何?赤司君は盗み聞きが趣味なの?』
「はは、違うよ。忘れ物を取りにね」
『ふーん?もうお弁当食べた?』
「食べたよ。今は部活の事で少しね」
じゃあ、と言って自席を目指す。その時に聞こえた、彼女の声。
『ぷぷっ!絶対あれぼっちでご飯食べてるよ!絶対ぼっちなか寂しくないもんって思いながらも寂しいから早めに食べてるよ!友達いないよ!』
奈央「アホ!アンタ何言ってん!?」
僕のこめかみに血管が浮かぶ。イラッとしたのだ。
「さん」
『はーい?って赤司君。あ、ごめん。今の聞こえちゃった?大丈夫、友達いないならあたしが友達になってあげるよ』
何言ってるんだ!と言わんばかりにクラス中にどよめきが走る。
「…君には求めていないよ。それに僕は馴れ合いが嫌いなんだ。人に頼りながら生きている、そんな弱い人間にはなりたくもないし興味もない。まぁ友達とやらに依存している君には分からないな」
『あははー、何それ。そんな意地なんか張ってないでさ、素直によろしくって言ったら良いのに』
さんはニコニコと笑っている。だが彼女の額には確かに僕と同様、血管が浮かび上がっていた。