第2章 近くて遠い距離
「ごめん、俺……」
「いいよ、もう……」
私はもう何も考えたくなかった。
「からかって、面白かった……?」
彼からは何も返ってこない。
「私は単純だからさ、さっきの嘘だってすぐ信じちゃったし……、及川君みたいな人が、私に構うこと自体、普通に考えたらありえないのにね……」
私の心はどんどんと黒くなっていく。
「及川君も及川君だよ。私みたいなやつに構ってないでさ、もっと他にいい子いるでしょ? 私に時間使うなんてほんともったいないよ……だから、手……放してよ……」
相変わらず彼の手は離れない。
「もう……ほっといてよ……」
「…………」
彼が何かを言ったようだったが聞き取れなかった。
どうせ、また笑っているのだろう。
「笑いたいなら、もっとはっきり……」
「雪乃!!!!」
私は呼吸の仕方を忘れてしまった……。
彼は私を名前で呼んだ。
夢の中の彼のように。
――ほら……、また勘違いしちゃうじゃん…………――