第1章 始まりは突然に
飛雄はその後「無理すんな」と何故か照れくさそうに言って部屋を出ていった。
可愛い弟は、いくつになっても可愛いのだ。
私は一人になってしばらく考えていると、重大なことに気付いてしまった。
「私、及川君に担がれたって……ヤバくない……?」
他の子に見られたら、私は学校中の話題の人物になってしまう。
「飛雄にもう少しちゃんと聞いておくんだった……」
なんだか熱が上がったような気がする。
もう起きてしまったことは諦めて、今は風邪を治すことに専念しよう。
私は気持ちを切り替えて、再び眠りについた。
その夜、私の夢には再び彼、及川徹が出てきた。
どんな夢だったかは起きた時に忘れてしまったが、彼が出てきたことだけははっきりと覚えていた。
だって、胸が熱くなったから…………。