第5章 〈異能〉
「で、中也さんは何処ですか」
「んー、もう一寸待ってたらこの辺に来るよ」
本拠地のビルを出て、少し歩いた処にあるのが今私達の居る洒落た喫茶店。
本当にこんな処に、中也さんは来るのだろうか。
「中也は意外とこんな小洒落た店が好きだからね。
私も何度か来たことがあるけど、あの鴨居は何度見ても丈夫そうで惚れ惚れするよ。
首吊るのには最適だろうね」
手許の珈琲杯を弄りながら、太宰さんは爆弾を投下した。
「首吊るって…そんなに死にたいんなら、如何にかして殺してあげましょうか?
そういえば、私と初めて会った時も『死に損ねた』とか云ってましたよね」
「うふふ。#NAME1#ちゃんでは私を殺す事は出来ないよ。
自分で云うのもなんだか可笑しいけどね」
その時、カランカランと来客を告げる鈴の音がした。