第10章 別れ
出棺も終わり、母と妹は京都に帰った。
あれから1週間…私はひたすら卒進の練習に励んだ。
入院していた間に色々変更があったけど、それも3日で全部覚えた。
そして迎えた本番、卒業進級発表会。
オープニングからダンス、演技、歌と順番にプログラム通り進んでいく。
面白かったのは第一部の中盤でした演技でしたね。
私も出た作品(2作品出た)で、『白雪ンデレラ』という名前の通り白雪姫とシンデレラを合わせたギャグコメディの作品です。
私は小人の1人で地下格闘技の女ファイターというワケのわからない設定のキャラを演じたのですが、コレがバカウケで…(笑
小人と王子がバトルするシーンがあるんですが、ここで2人とも服を脱ぐんです←(モチロン下は穿いてる。
王子役の先輩はどっちかっていうとガタイは良い方ですがあまり筋肉はない人で、上半身裸になってもウケるのは先生や友達や家族など身内がほとんど。
対して私は自分で言うのもなんですが、かなり筋肉質で逞しい身体付きの為、上の服を脱ぎ捨てアンダーブラだけになった時、割れた腹筋を見てお客さんが一瞬息を呑む音と歓声が聞こえてきた。
卒進後にアンケートの紙を見てみると『女子とは思えない身体付きだった』とか『役じゃなく本物にファイターなのかと思った』とかメッチャ書かれていました。
同期や先輩後輩からも「この間まで妊婦だった人の腹とは思えない」と言われました。
嬉しいけど女としてはどうなんだろうか…?
第1部が終わり10分休憩を挟んで第2部スタート。
アフレコから始まり、また演技やダンスや歌を披露する。
そしてエンディング前の演目で、私が歌う番(まさかの大トリ)がきた。
舞台裏で緊張しまくりで、みんなに「頑張れ!」、「実力見せたれ!」と激励を受け、深呼吸して舞台に出る。
真っ暗な中で最後の気持ち作りをする。
死産した事…とても悲しかった。
これからもずっと忘れる事はない。
けど、いつまでも悲しんではいられない。
だから、もうやめる。
悲しむのも…後悔するのも…そういった言葉を口にするのも…全てやめる。
心の中で、天国へ行ってしまった赤ちゃんの名前を呟いた…。
凪(…『渚』、ゴメンな。母ちゃん、もうこれで泣くの最後にするから……)
曲がゆっくりと流れ照明が点き、スゥと息を吸った。