第1章 妊娠
彼氏「お前はどうしたいんや?産みたいか…?堕ろしたいか…?」
ー 堕ろす ー
凪(そうか…産まへんって事はイコール…堕ろすって事やねんな……)
当たり前の事なのに、何故かその事がまったく頭に浮かばなかった。
たぶん無意識に考えないようにしてたんだと思います。
自分の中に確かにある『命』…それを『殺す』という選択を…。
凪(堕ろすって…"こいつ"を殺すって事やんな…?)
思わず下腹部を摩る。
学校の事…家の事…お金の事…
色々思う事はありますし、不安だらけでしたが…
凪(堕ろすのは…イヤやなぁ……)
母性ってやつなんでしょうか?
どうしても『堕ろす』という行為を選択肢に入れる事が出来ませんでした。
顔を上げると、そこにはニコニコ笑ってる彼氏の顔。
私の答えはわかっていたみたいです。
凪「オレ…産みたい」
彼氏「うん、やと思った♪」
そう言うと彼氏はギュッと抱き締めてくれて、思わず泣きそうになった。
凪(こいつが彼氏で良かったわ……)
普通に受け入れてくれた彼氏の優しさに、この人と付き合っていて本当に良かったと思った。
彼氏「あ、けど学校とかどないする?行きたい言うてんのに辞めさすのはなぁ……」
凪「それは何とかする…とりま学校始まってから先生に言うてみるわ。あの学校高等はクソやけど専門の先生は話わかる人多いし……」
学校の事はなんとかなるとして、問題は私の家の事と……
凪「…結婚とかどうする?」
そう、コレが問題。
デキたからには私達の関係をどうにかしないといけない。
けど、彼氏はあと1年経たないと年齢的に結婚出来ない。
彼氏「モチロンする!あと1年経たたんと籍は入れられんけどな……」(笑
するといきなりベッドから降りたかと思うと、私の前で片膝をついて手を差し出してきた。
彼氏「凪、オレと結婚して下さい!!今はオレ金無いけど、これからもっと稼いでお前ら三人養えるようになるから!!絶対泣かせへんし、絶対幸せにするから!!」
これでもかと目を見開いて力説する彼氏に、思わず吹き出してしまった。
一頻り笑い「はい!」と言うと、満面の笑みで抱き着いてきたので思いっ切り抱き返した。