第9章 死産
母「辛そうやね、凪」
凪「午前中は余裕やってんけど…って、ア"ァ"ァアアア!!」
襲ってきた痛みに低く呻きながら毛布を掴んで耐える。
普段出さない低い不気味な呻き声に母と彼氏はビクッと身体を震わせていた。
この時の時刻は午後1時半頃…
この時には更に痛みも増し、間隔は2分おきから1分おきになっていた。
母「汗で顔ヌルヌルやん。拭くか?」
凪「う、うん…」
毛布を握り締めたまま離せないので母が汗を拭いてくれた。
顔はスッキリしたけど、身体は汗ばんで服が貼り着き気持ち悪い。
凪(自分が選んだ事やけど、やっぱ出産ってしんどいねんな…いつまで掛かるんや……)
そんな事を考えていると、下からポコッという音と何かが落ちる音が聞こえた。
凪「あ、バルーン抜けたかも」
彼氏「先生呼んでくるわ!」
慌て過ぎて彼氏はコケながら女医さんを呼びに行った。
すぐにやってきた女医さんが子宮口が充分に開いた事を確認するとナースさんを呼んだ。
そして急にバタバタと慌ただしくなる。
台の足元にある足置き場に足を置かなければいけないのに、痛くて足が開かない。
分娩中に別の物が出そうになり、指で栓をされる。
他人の手で肛門に栓をされるのは激しい痛みの中でもかなり恥ずかしかった。
ナース「なが〜く深呼吸して下さい」
凪(う、上手いこと出来ん…)
母「頑張って〜」
彼氏「頑張れ凪〜!ふんばれ〜!!」
凪「海うっさい!!」
声援は嬉しいけど耳元で騒がれると流石にイラッてくる。
うるさい彼氏にピシャッと言うと、途端にシュンとなって大人しくなる。
そして4、5回痛みの波がきた後、重くデカい塊がポンッて抜けた様な感覚と紐の様な物が出てきた感じがした。
凪(う、産まれた…?)(汗
彼氏「な、凪!産まれたぞ!!」
無事出産は終了した…早い方だったみたいです。
何かをやり遂げた感があった。
ただし、そこに本来なら聞こえるハズの産声はない。
午後3時18分、出産。