第5章 執着の時間
だが…
力が入り切らず、それ以上動けない。
目に涙がにじむ。
ケイト「あ…;」
そんな中、左手が左腕と共に地面に触れた。
ケイト「…父、上っ;…母上っ;;」
涙でこもる声。
白くにじんだ視界の中
煌々と燃え上がる赤い炎と、車の黒い影を最後に
その目は閉じられ、意識を手放した。
ごごごごごごごご
激しく燃え上がる炎をその身に感じ
その炎が、車を燃やし尽くさんとしている激しい音を聞きながら…)
『何も、出来なかった!;;
護られてばっかで、護れたことなんてなかった!!;
でも…
おかげで笑顔をもらったんだって、誕生日の時に言われた……
死ぬほど嬉しくて、舞い上がってた。
何で…どうして……(涙)
そればっかりが蘇っては
私を責め立てたい気持ちでいっぱいになる!;
気がおかしくなりそうになる!!;
何度も何度も、悪夢として闇が蘇る。
じっちゃんとばっちゃんが殺された場面も、蘇る;;
もう嫌だ;死にたい;
生まれてこなければよかった;
そんな思いを
どれだけ抱いてようが、零そうが呟こうが
誰も聞く耳なんて持たなかった。
知ろうともしないまま、好きに言われるばっかで…
こんな思い、いっそなくなった方がなんて思ったりもした。
殺した奴等を憎みたくもなった。
色んな気持ちが膨れ上がっては制御が効かない;
いつ暴走するかもわからない。
暗闇の中に、その当時の感情も気持ちも置いてきたんだ。
無理やり押し込めて、押し殺して!
そうしてやっと、何とか生きてきたんだ。
でも、抱いていい。
零してもいい。
聴いてくれる人が、ここに居るんだって解った。
大切なのに何度も助けられなかった自分を嫌いになってた。
それを大事に想ってくれる人が
知ろうと、寄り添おうと…
支えようとしてくれた人が、現れた。
こんなの、夢物語か漫画でない限りないって思ってた。
ずっと、決めつけてたんだ。
こんなの、出したらいけないんだって。
自分以外を護る事に執着して
肝心の自分を護る事は全くしたらいけないんだって…。
だけど、違った。
ここに居るんだって、やっと気付けた。
そして…
それと同時に、一人じゃない…
一人だけじゃないんだって、解ったから……私はっ…』