第5章 執着の時間
殺せんせー「あなたも私も
闇の中をさまよって
『自分らしさ』というものを失ってしまった。
それがなくなれば、どんなものを失っていたのかも気付かぬまま…
しかし…
今となれば、よく解るでしょう?
あなたがE組に来て
そうして、ずっと押し殺してきたものから
闇からも救われ、自分も大事にすることを学んだように…
私は、あぐりと出会って…
一年の時を共にして
いつしか…
本来、『あるべきはずだった自分』を取り戻した。
その笑顔も、自由さも
それは勝手に視えるかもしれない。
だけど、だからこそ
それごとひっくるめて、大事なものなのだということを忘れないで下さい。
それも、あなたの魅力です。
見ていて笑顔になれる。
純粋な…とても、大切なものなんです。
その勝手に振り回される側には、確かに負担は増えるかもしれない。
しかし、それに勝る『笑顔』を…
『幸せ』を
あなたはこの手に、確かに与えてくれた^^
その『温かさ』も…『明るさ』もね(にっこり」
そう笑いながら、優しく頭を撫でていた手を離した。
流れ落ちた涙をそのままに、
殺せんせー「とてもとても幸せで…
毎日毎日、いつもいつも救われてきました。
だからこそ…護りたいんです。
あなたも、E組の皆さんも…
その、温かくて眩しい…『大切な笑顔』を……
絶対に、死なせませんから…
長く時間がかかるでしょうが
どうか希望を捨てず、待っていて下さいね」
そう言いながら
最後に額に落ちた涙を、手でそっとぬぐって
窓から飛び去っていった。
そこに残されたのは…
朝が過ぎても残る
心から念じられた、一つのメッセージだった。
起きた時に、聴いてくれると信じて…
(ケイトさん…
あなたが居なくて、幸せな人なんていないんですよ。
あなたが居てくれて、救われた人がいるように
確かに、嫌な思いをした人だっている。
だけどね、それで失っていい命なんてないんです。
失う側の痛みは、よく知っているでしょう?
あなたも私も…
失いたくない、『掛け替えのないもの』を失ってしまった。
だからこそ、解るはずです。
痛い時は痛いと言っていい。
気持ちも感情も、零していい。
だから、死ぬ事を選ばないで下さい)