第22章 分裂の時間
そうして
最後は、渚とカルマの一騎打ちとなった。
カルマにとって、渚は人畜無害な小動物だから
ケンカっ早いカルマにとって、警戒しなくて済む数少ない人間だった。
でも今思えば、そんな渚と距離を置いたのは
既に当時からざわつく部分があったんだろう…
油断できない何かがあった。
何かが怖い…
だけど、ケンカや勉強で勝っても意味がない。
明らかにそれとジャンルが違うから。
そんなやりにくさから、気が付けば疎遠になっていた。
逆に、渚にとってカルマは中1の頃からの憧れだった。
勉強も喧嘩も、勝てる強さがあるから上がれる舞台…
渚には、とても上がれなかった。
そんな相手同士との対決だった。
その相手と、この3年生で初めて暗殺という同じ舞台に上がっている。
殺してみろよ渚君!
俺にもケイトにも無かったその才能で!!
それを全部へし折って、俺が勝つ!!
その信念と共に、戦っていた。
そのはずだった…
読み誤った。
全ての殺気が凝縮されたナイフが迫る中
それを避ければ、勝ちだと思った。
だけど…
次の瞬間、殺気が消えた。
それと同時に
頸動脈を、腕でしがみ付く形で閉めにかかられた。
完璧に決まった。
それで、必死に逃れようとした。
必死に暴れる中、それでもほどかれなかった。
渚「絶対!いうこと聞かす!!」
カルマ(やばい…このままじゃ!)
そう、叫びが耳元で響く中…
必死に脇腹を殴っても、ほどけることはなくて……
そんな時、たまたますぐ近くに
俺のナイフが落ちていた。
それで刺せば、俺の勝ちだ。
それでも、脳裏によぎったのは
渚『僕が喧嘩?
怖いから、たぶん一生出来ないよ^^;
まぁ、やらなきゃ死ぬってんなら別だけど』
昔に渚くんが言ってた言葉だった。
渚「くうううううううっ!!!」
そして今、眉間にしわを寄せながら…
全力で、必死に押さえ込み続けている渚を見て…
俺は…ナイフを手放した。